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東京高等裁判所 昭和36年(ネ)1057号 判決

被控訴人が特別都市計画法に基づき土地区画整理のための道路敷地として控訴人に対し昭和二四年一一月一五日同人所有の甲府市百石町一番地の三宅地三三〇坪のうち一〇一坪二合八勺が減歩され残地二二八坪七合二勺を換地予定地の指定をなしたこと、訴外山梨県が控訴人より右指定後の昭和二六年八月二〇日児童相談所の建設用地として右換地予定地として指定した部分の土地を買受けたこと、同年八月二四日右三三〇坪の土地が同番地の三、宅地二二八坪七合二勺と同番地の五、宅地一〇一坪二合八勺の二筆に分筆登記され、前者につき県のため所有権移転登記が経由されていることは当事者間に争がない。

控訴人は同人所有の同番地の五の宅地一〇一坪二合八勺に設置しある塀及門柱を被控訴人が不法に除去したことを理由にこれが補償を請求するを以てこの点につき判断するが、先ず双方当事者間の紛争の経緯についてみるに、(証拠)を綜合すると次の事実が認められる。

前記一番地の三宅地三三〇坪の土地は控訴人が昭和二四年八月一〇日訴外日本勧業銀行から一坪三、五〇〇円の割で買受けたものであるが、当時右土地のうち北側一〇一坪二合八勺の部分が道路敷の予定地となつていたので右売買契約に際しとりあえず右減歩さるべき部分に対応する代金額を控除した残代金を支払い(この未払分は後記のとおり一切の問題が解決したので控訴人は支払つた)将来換地処分が確定し減歩に対し補償金が交付される場合は未払代金に代えてこの補償金を引渡すとの特約をなしたこと。その後山梨県が控訴人より換地予定地として指定した部分の土地を買受けたことはさきに記したところであるが県としては実質上はこの換地予定地を目的として買受けたものであり、売主たる控訴人としてもこのことを諒知していたものであるから、右売買契約書(甲第一四号証)にその目的物件として第一条に同町一ノ三番地宅地二二八坪七合二勺、第四条に当該土地に附随するコンクリート塀及びコンクリート図書庫等総ての物件と表示されてはいるが、その趣旨は換地予定地に表象された同番地の三宅地三三〇坪(従前の土地全部)及びその地上に存する物件を買受けたものというべきである。従つて右土地全部の移転登記手続をなすべきであつたが県事務当局は控訴人の委任状を徴して前示のとおりの誤つた分筆及び移転登記手続を了したこと。都市計画事業の施行者たる被控訴人は道路敷予定地となるべき従前の土地の一部(一〇一坪二合八勺)に門柱、塀等の工作物が存していたのでその土地につき右の如き登記の存することを知らずに県の申出によりこれ等物件を除去するに至つたこと。他方控訴人は右土地が登記簿上自己の名義であることを理由にその所有権を主張し、被控訴人に対し右物件の除去は不法であるとしてその補償を要求するとともに右土地の権利確保の手段としてバラツク建の小屋を急造したのでこれがため児童相談所の開設を妨げられるに至つたこと。このようなことから従前の土地が分筆されていることを知つた被控訴人は県当局及び控訴人に対し話合の上善処することを求め若しそれが不調のときは施行者の立場としては登記簿上の権利関係に基づき換地予定地を従前の土地の比率により更に権利区分をせざるを得ない旨申入れたが、県としては既に児童相談所の建物がその地上に存しておつたのでこの権利区分に応ずることができなかつたため止むを得ず示談解決の方法として県有地の一部を、被控訴人から控訴人に対し換地予定地を追加するという形式をとつて交付されるよう申出がなされたこと。そこで被控訴人は、県側における前記の如き事情もくみ、かつは施行者として都市計画事業の進捗にも影響することを考慮し、昭和三二年一一月一四日控訴人に対し同番地の五宅地一〇一坪二合八勺の仮換地として六四坪八合と二〇坪一合五勺の二筆(合計八四坪九合五勺)を追加指定し、県に対し同番地の三宅地二二八坪七合二勺の仮換地としてさきになした換地予定地の指定を取消し同坪数を第二回指定として行つたこと。

更に被控訴人は昭和三〇年一二月九日控訴人に対し金五万円を同番地の五の地上に存した前示バラツク建小屋、コンクリート塀その他門柱を含めて一切の工作物除却による補償の趣旨で支払うことにより一切の問題を解決したこと。(中略)

以上認定によつても明らかなとおり控訴人所有の一番地の三宅地三三〇坪のうち道路敷予定地の一〇一坪二合八勺を除く二二八坪七合二勺の土地につき換地予定地(仮換地)の指定がなされたので山梨県は右換地予定地が将来そのままで換地として指定されることを予想してその換地予定地に着服してその土地を買受けたものであるからたとえ売買の目的として換地予定地を表示していても従前の土地全部の売買がなされたものと解すべきである。(従つて、控訴人が所有権移転登記経由に際し分筆をすべきものはでなかつたのであるが、強いて分筆に意味を認めるとすれば、分筆の結果、登記面だけ控訴人の所有として残存する部分、即ち減坪される部分の補償金を控訴人自身に保留する意図であつたと推定し得るに止まる。しかもこの補償金も、すでに換地予定地の追加により解決されている)尤も右の売買価格(甲第一四号証によれば金一一五万円)がさきに控訴人が原所有者より買受けた価格(当審証人島田の証言により成立を認むべき甲第八号証によれば金一一五万五、〇〇〇円)に比し若干低廉であつたことは認められるが換地処分完了後の換地清算金ないしは減価補償金の帰属につき前述の控訴人の意図するところよりすれば、必ずしも前示認定の妨げとなるものではない。また登記簿上従前の土地が分筆して売買された旨の記載も県当局者の誤解によつてなされたものであることはさきに認定したところであるから、この事実によつても右認定を左右し得ない。而して売買の目的たる土地に附随するすべての物件が買主の所有に帰すべきことも前示のとおりで明らかである以上被控訴人は控訴人に対しこれ等物件の撤去等による損失を補償すべき何等の義務も存しなかつたものと謂わざるを得ない。然るに、それにも拘らず、被控訴人が控訴人との間に右物件の損失補償の趣旨で金五万円を支払うことによつて示談解決をしたことは前叙の如き事情によるものであることを併せ考えるとき右の点からしても控訴人は右物件に対する所有権の有無にかかわりなく被控訴人に対し損害の請求をなし得ないこと明らかである。

(毛利野 平賀 加藤)

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